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蝉の鳴き声、塩屋から須磨に抜ける木曜日の道路。夕刻の温度表示は29度を指した。本物の夏はもう目の前である。
日が変わって25日午前1時35分の店、微妙な時間である。一応、45分にお客様がいなければ大抵店は閉めている。カウンターで日記を書いていたら、扉をノックする音がした。その音が遠慮がちだったのと、まぁ特に金曜のアポが朝早いわけでもないので開けてみる。そこには懐かしい顔の女性が一人、立っていた。
顔はどう見ても欧米人なのだけれど、英語が話せない西川ヘレンのようなハーフの彼女はロージーといい、南青山でアンティークショップを営んでいる。知り合ったのは店を始めてすぐだから、8年になる。震災後すぐに神戸から東京に行った彼女だが、ここで会うのは2年以上ぶりである。
「志賀さん、なんか変わったねぇ……」
結構その言葉には敏感な僕である。久々に行った店のオーナーが変わってたり、店に立っていたはずのバーテンがいなかったり、店が無くなってたりすると寂しいものだ。「いつも変わらずに、細く長く続けること」をずっと通してきたつもりだったから、少々ショックだったし、何が変わったのか聞き出したかった。
あの頃と同じように他愛のない話から、プライベートのこと(幸せそうだ!)、仕事へのこだわりなどを語り合う。もうすぐ30歳になる彼女は、意見も自覚も大人になっていた。新品ではなく、誰かのどこかに存在したアンティーク家具だから、その橋渡しには責任が生じる。仕入れたプロセス・想いもある。
「その人となりを知って、この人なら大切にしてくれると思わないと売れない」
お客様を選んでる、と彼女は言った。その辺は僕も同じだ。
「志賀さんは、いつも言い続けてきた言葉が顔に表れてきたね」
彼女は僕の「変化」をこう表現した。
年を取ったということなのかも知れないが、こんな「変わった」ならば受け入れることが出来る。離れて解るその再会に、互いに酒を飲みまた語り続けた。
当然閉店時間など、どこかに消え失せていた。
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